
私は今までの人生で一度だけ、運命的な出会いを果たしたことがある。
それは小学3年生のある土曜日。リビングで点いていたお笑い番組を家族で眺めていた時だった。とある芸人さんが登場してきて、ネタを披露する。ギャグや決め台詞があるわけでもなく、大道芸のようなネタだった。そこでかかった、BGM。
ネタの裏でかかっているだけの、雰囲気を作り出すためだけの音楽だ。けれど小学生の私は、その音楽に夢中になった。ナニコレ、カッコイイ。当時の私は音楽なんかに興味がなかったし、ましてや一目惚れのようなことだってしたことがなかった。
けれどあの時の衝撃は、未だに体に刻み込まれている。歌詞なんて全く入ってこなかったし、誰が歌っているものなのかも知らなかった。ただそのメロディーに「一聞惚れ」してしまったのだ。
母に尋ねると「それ、セカオワだよ」と言われた。SEKAI NO OWARI。変なバンド名だと思ったし、怖いピエロだっていた。RPGという曲は聞いたことがあったものの、今までの人生では全く縁がないような世界だった。
あの時にかかっていた音楽は「Dragon Night」と言うらしかった。ドラゴンナイト。なんて素敵な響きなんだろう。一度聞いただけで運命的な何かを感じてしまった私は、何度もその番組を見返した。背景にかかっている音楽だけを聴きたいのに、拍手や歓声がその邪魔をする。当時の私に、好きな音楽を聴ける手段は何もなかった。
それからすっかりセカオワに虜になった私は、母にライブビデオを買ってもらい、レンタルショップにCDを借りに行った。携帯を与えてもらうと、ひたすら曲を聴きあさったし、2年後にはライブにも初参戦した。
ライブで初めてセカオワを生で見た時、なぜだか涙が止まらなかった。
本当にいる。本当にいる……!
それほどステージに近い席でもなかったけれど、肉眼で彼らが見えた。存在を疑っていたわけではないのに、にわかには信じられない気分だった。それは、一方的な片思いが実ったような、神様にお目にかかれたような、そんな非現実的な感覚だった。
「Dragon Night」を聴いたあの瞬間、私の世界が始まった合図がした。恋でもなく、推しでもなく、ただただそのバンドが好きで、音楽を愛して、言葉に救われた。話したこともない人たちをこんなに愛せるのは我ながら不思議だったが、すごいことだと思った。ステージや画面越しでしか見たことのない人たちのことを、どうしてこんなに好きでいられるのだろうかと。
一人ぼっちで悲しい時、学校に行けずに悔しい時、自分が周りと違うと感じるたびに、セカオワに救いを求めた。音楽を聴けば、彼らが「みんなと違う」私をすべて肯定してくれるように感じた。
SEKAI NO OWARIに出会ったことで、私の世界が始まったのだ。