こころの声を綴って ー場面緘黙症と歩む日々ー

場面緘黙症を含めた不安障害とうつ病、SEKAI NO OWARIについてなどを書いていきます。

最後の一撃

「ストップ!」

 顧問の先生が大声でそう言い、部活の練習を中断した。ボールがバウンドしていたり、バッシュで走ったりする音が響いていた体育館が、一瞬で静かになる。

 私は、数日ぶりに参加した部活だった。このままでは行けなくなってしまうと危惧して、何とか自分を鼓舞して登校した。体育館独特の音の反響とか、ボールのゴムの匂いとか、そうした五感全体で拒絶感を抱くほどに、部活に対してストレスを感じていた。ただでさえ初心者なのに、数日休んでしまったせいで、周りとの差は圧倒的に開いていた。

 新しく始まった練習メニューを、見よう見まねでついて行こうとしたけれど、やはりおぼつかない私の動きは全体に支障をきたしていた。その様子をずっと見ていて、ついに痺れを切らした先生が、声を上げたのだ。

 部員全員の視線が、私に集まる。

「全然できてない!」

 彼女の鋭い目が、私を刺した。そしてその目を逸らさないまま、言った。

「わかってる?こころが、足を引っ張ってるんだよ」

 私は、涙を堪えるので精いっぱいだった。ただ弱い心に負けじと、先生の目をじっと見つめ返す。そうしないと、その場で泣き出してしまいそうだった。

 わかっていた。ここで私が泣き出したところで、誰からも心配なんかされない。先生の怒りを増長させ、部員に迷惑がられるだけだ。だから、泣いたらダメだ。

「はい」

 もう無理かもしれない、と思うたび、入学した時に隠し持っていた希望を思い出して、自分を奮い立たせていた。変わるって、誓ったじゃないか。たとえいじめられても、変わるって約束したのに。だってほら、あんな問題児、嫌だったでしょ?

 それでも、限界はやって来た。もう、無理なのだ。部員全員の前で先生に怒られたその日、心が壊れる音がした。最後の一撃は、見事に私の心に命中した。

 

 部活に参加できたのは、その日が最後になった。