
7月の終わりから休部していたバスケットボール部を、ついに退部することにした。2年生に進級する、直前のことだった。
相談室で、顧問の先生2人と向かい合い、退部届を書かされた。自分の名前と、顧問の名前、そして、退部する理由。緊張のあまり、顧問の名前をど忘れしたほどだった。2人がこちらをじっと見ているその様子が、退部しようとしている私を責めているようにしか感じられなかった。最後に部活に行ったあの日、突き刺すように私に向けたあの目と、同じ目。私は休部してから、顧問との関わりを極力絶ってきた。でもいざ退部するとなると、こうして向かい合わないといけないことが皮肉だった。
震える手で何とか名前を書き終えた後、『退部する理由』を書く欄を前に、私は固まった。
何て、書けばいいのだろう。自分が、弱かったから?今、目の前にいる先生たちが、先輩たちが、怖かったから?
何を書いても誰かを責める言葉に傾きそうな気がして、散々考えた挙句、『友達と上手くいかなかったからです』と記入した。嘘じゃなかったが、それはここに来る数えきれないほどの理由から一つを抜粋しただけで、部活をやめるという理由を、一言で言い表せるものではなかった。苦痛でしかなかったあの場所を去る理由は、一言なんかじゃ、到底表せなかった。
私が部活を去った後、同級生たちのトラブルがエスカレートして、彼女らの標的は翼ちゃんに向いたらしかった。だから、同時に入部した翼ちゃんは、偶然にも私と同じ日に退部届を出したと聞いた。
以下は、退部届を出した日、「部活ノート」の最後のページに書いた文章だ。誰に見せるわけでもなく、ただ正直に自分の思いを綴った。
『5月から7月まで部活をやって来て、大変なことは本当にたくさんありました。バスケの経験もなく、小学生の時にはなかった「ルール」で私は縛られていたのだと今考えれば思います。
部活に取り組んだことで、私は、自分が社会では生きていくことができない弱い人間であるということを実感しました。
小学生の頃、大嫌いだった自分から抜け出そうと思い、入った部活。自分を好きになろうと思い、入った部活。そんな部活からも逃げ出してしまい、私は、もっと自分が嫌いになりました。
休部してから、「部活になんか、入らなければよかった」と何度も思いました。バスケ部に入ったことで、私は自分を嫌いになっただけだと。
でも部活は私に、社会の厳しさを教えてくれました。私が2か月間、嫌々ながらも部活をした意味は、きっとあるはずです。
でも私は、もうあの日々には戻れない。部活を、バスケットボール部を、辞めさせていただきます』