
妹の蘭に「こころちゃんがいると恥ずかしい」と言われたのは、突然のことだった。
妹の蘭も、弟の葵も、私のことは「お姉ちゃん」ではなく「こころちゃん」と呼ぶ。私は幼い頃、一人称が「こころちゃん」だったので、妹も弟も私のことは「お姉ちゃん」より先に「こころちゃん」と認識したようだった。それが、今でも続いているのだ。
今思えば、当時蘭は蘭の世界で、必死に闘っていたのだと思う。私のように、病気や不登校という切り札もなく、私のような姉を持つ「きょうだい児」として。
蘭は、彼女の世界で闘って、闘って、それでも限界が来たかのように私にそう言った。不登校で引きこもりの姉を持つ妹として、誰かに何か言われたのかもしれない。
けれど私は、一日中考えていた生存意義に、拍車をかけられた気分だった。
いない存在になった方がいい。私は、いない方がいい。
「私、恥ずかしい存在なのかな……」
そう思うと、唯一の味方であった家族でさえも、信じがたくなった。みんな、口にしないだけで、そう思っているのだろうか。
半泣きで、弟の葵に相談した。誰かに話さなければ、自分が消えてしまう気がした。でも、親に話したところで、私と蘭の両方を正当化する言葉しか返って来ない気がした。だから無意識に、葵の部屋に向かったのだ。
「蘭に、私がいると恥ずかしいって言われた。私は、いない方がいいのかな?」
当時小学4年生だった葵は、そんな突然の姉からの重い相談に動じることなく言った。
「俺は、こころちゃんがいないと恥ずかしいよ」