こころの声を綴って ー場面緘黙症と歩む日々ー

場面緘黙症を含めた不安障害とうつ病、SEKAI NO OWARIについてなどを書いていきます。

高校見学

 狙いを定めたH学園へ、個人的に見学に行った。学校説明会とは違い、平日の授業が実施されている時間に、学校内を見学する。

 私たち親子を案内してくださったのは、教頭先生だった。

 背が高くて、きっと、お父さんよりは少し年上の男性。清潔感があって、マスクを着けていても優しそうな雰囲気が伝わってきて、怖い大人だとは思わなかった。

 応接室、1階の教室、グラウンド、校舎の離れにあるプレハブ小屋のような特別教室。

 1階の案内が一通り終わった頃、教頭先生が腕時計を確認して、私たちに訊いた。

「もうすぐ休み時間に入るので、生徒たちが教室から出てくるかもしれないんですけど、大丈夫ですか?」

 彼の目が、私の方を向いている。

 大丈夫じゃないと言ったら、どうなるのだろうか。

 訊かれたものの、結局私が出せる答えは一つしかないんじゃないかと思いながら――自分の感覚的には、大きく頷いた。

 けれど後から聞いた母の話では、私は固まったままで、頷くどころか目を伏せる程度しかできなかったらしい。

「大丈夫そうですね」

 教頭先生は、私のその微かな反応を見て、言った。

 母はその様子を見て、「ああ。ここなら大丈夫だ」と思ったらしい。理解してくれる人がいる。娘のことを、わかってくれる人がいる。

 帰り道、母が心底ほっとしたように、とても嬉しそうに「大丈夫だって!大丈夫って言ってもらったよ」と言っていたのを覚えている。自分が学校に通う、という想像がついていなかった私は、曖昧に頷くことしかできなかったが、母の表情を見て、少しだけ安心した。

 そうして私は、H学園への進学を本格的に決定した。