
高校受験の前に学校長から推薦をもらうために行う、校長面接が実施された。
中学校の校長先生は、私のことをよく理解してくださっていた。面接も筆談であることを許可し、担任の先生や母も、面接に同席していいということにしてもらった。
相談室に登校するたびに何度か、面接の練習をしていた。「ノックは3回するものだ」とか、「どこでお辞儀をするのか」とか。
校長室に入る時、緊張のあまり手が汗ばんでいた。
席に座った私を見て、校長先生がにこやかに言った。
「ではまず、中学校名とお名前を教えてください」
ノートを広げて、ペンを持つ。
中学校名と、自分の名前を記入する。動きが緩慢になっていた。ノートに文字を書いて、それを校長先生に見せる。たったそれだけの作業に、何分もの時間を費やした。
その後も、志望動機、得意科目、自宅からの距離、長所、高校生になったらしたいことなどを訊かれた。
そのたびに震える手で、ゆっくりゆっくり文字を書いた。校長先生にじっと見られていることで更に緊張が高まり、思ったように体が動かない。脳が出す「動け」という命令を心が急ブレーキで止めているような、そんな感覚だった。
最後に、校長先生が言った。
「将来の夢はありますか?」
私はまた、時間をかけて答えた。
『自分を救ってくれた言葉や音楽で、いつか誰かを救ってみたいと思っています』