
H学園では、1年生の1学期が終わるまでは、クラスメイト同士の連絡先交換が禁止されていた。
友人トラブルを避けるための校則なのだろうけれど、それにしても連絡先の交換が禁止なんて、自由を侵害されたような気分だった。そうはいっても、私には連絡先を交換できるようなお友達はいなかったのだけれど。
1年生の夏休みが明けて、2学期学校に行くと、クラスメイトの女の子たちに声をかけられた。
「ねえ、こころちゃん。LINE交換してくれない?」
そう言ってくれたのは、夢愛ちゃんだった。
夢愛ちゃんは、4月、一対一の自己紹介でペアになった子で、小柄な体型と丸いめがねが印象的な子だった。26人のクラスだったけれど、ほぼ毎日学校に来ている子は10人もいない。男子がほとんどのその中で、夢愛ちゃんは1年生の9月現在皆勤賞だった。そして驚くことに、皆勤賞ではないけれど、私もその中に入っている。
夢愛ちゃんは、本当に優しい子だった。自己紹介の時、声が出せずにプリントに書いた文章を指差した私に、彼女は少しも不思議そうな顔をしなかった。「ありがとう」と言って、まるでそれが当たり前のことのように受け止めてくれた。
新生活に慣れてくると、登校した時や下校する時に「また明日ね」と手を振ってくれた。私には、まだ手を振り返すことはできなかったけれど、その声があるだけで一日が少し明るくなる気がした。
私は頷いて、夢愛ちゃんたちとLINEを交換した。これで、声がなくても、コミュニケーションが取れる!画面に彼女の名前が表示された瞬間、胸の奥がふわっと温かくなった。
ああ、これが「友達ができた」ということなんだ。
3年間心を閉ざしていた私の中に、すっと微かな光が差し込んだ。