
ゴールデンウイーク明け、担任の菊池先生と相談をして、クラスメイトたちへの手紙を代読してもらうことになっていた。
実は1年生の時にも、当時の担任の先生に手紙を代読してもらったのだ。
内容は、私の病気についてだった。
『2年B組のみなさんへ
去年同じクラスだった人は知っていると思いますが、私には場面緘黙症という病気があります。場面緘黙症は、家では普通に話すことができるのに、学校などの特定の場所で声が出せなくなる病気です。表情が動かなかったり、体が固まって運動ができなかったりするのも、この病気の症状です。
反応はあまりできないけれど、お話はちゃんと聴いているし、話しかけてもらえることはすごく嬉しいです。少し時間はかかってしまうかもしれませんが、筆談や頷きなどでコミュニケーションを取ることはできると思います。これからもよろしくお願いします』
わざわざ自分から病気をカミングアウトしたのは、何も知らない状態だったら無視をしているように見えるだろうと危惧したからだった。本当は陰でこっそり病気を闘う健気な子でいたかったけれど、こればかりは仕方ない。
先生が騒がしいクラスを鎮め、その手紙を読んでいる間、恥ずかしくて顔を上げられなかった。これを聞いているクラスメイトは、一体どんな顔をしているのだろうか。クラスは異様に静まっていて、余計にそんな不安が増した。
視界の隅に、春乃ちゃんの姿を捉えたのはその時だった。彼女は私の前の席に座って、先生の方を真っ直ぐ向いていた。
春乃ちゃんは、何度も頷きながら、私の手紙を聞いてくれていた。
「あの子は変な子だ」とか、「急にこんな手紙を読みだして何様なんだ」とか、まだお互いの人柄を知らないクラスメイトたちに、どう思われるのかが怖かった。でも、その中で、春乃ちゃんが頷いてくれている姿を見て、やっと味方に出会えたような気がしたのだ。
そんな些細なことだけれど、私は彼女に救われた思いだった。