
クラスメイトの響ちゃんから映画に誘われたのは、高校2年生の11月のことだった。
最初に思ったのは、「まさか私が?」ということだった。
響ちゃんは私から見るに、明るくて、他クラスにも友達が多い。
映画を観に行く相手なんて選べるほどいるはずなのに、どうして病気の私なんかに声をかけてくれたのだろう。
それでも、私は浮足立っていた。高校に入学してから、お友達と遊ぶのは初めてだった。夢見てはいたけれど、それは結局実現しないであろう夢だと、どこかで思い込んでいたのだ。
遊びの誘いを快諾し、12月の終わりに映画を観に行った。
話すことが不自由な私にとって、映画館は最適な場所だった。それを考えた上で、私をここに誘ってくれたのかもしれないと、響ちゃんの横顔を見ながら思った。
映画の後、1月にある菊池先生のお誕生日プレゼント探しをして、お揃いの栞を買って、サーティーワンでアイスを食べた。会食恐怖症の私にとって、お友達と何かを食べるのは緊張したけれど、アイスは口に入れると溶けるだけで、噛む必要がない。食べてみて、比較的ハードルの低い食べ物だと思った。
響ちゃんは、ゆっくりしか歩けない私のスピードに合わせてくれた。
家は反対方向なので、駅のホームで別れる。やって来た電車に乗り、その中で私は、一人満足感に包まれていた。
お友達と、遊べたのだ。紛れもなく、この私が。
私はまた一歩、前に進んだ。