
私が入学したF大学の入学式は、4月1日に行われた。
慣れないスーツに、ちょっと踵が高いパンプス。会場近くの駅のお手洗いで鏡を見ると、一気に大人に成長したような自分が映っていた。
春とはとても思えない、寒い日だった。おまけに冷たい雨まで降っていた。薄いストッキングだけに覆われた足首があまりの寒さに悲鳴を上げる。行く途中で耐えきれなくなって、コンビニでカイロを購入したほどだ。
式が執り行われるのは、私が通うキャンパスではない方のチャペルだった。会場に着くと、親子が別れさせられる。流石にもう子供じゃないので、母と離れることに若干の不安を感じながらも「またね」と言ってあっさり別れた。親は人数が少ないせいか、すぐに会場内に入れるようだったが、新入生たちはまだ会場内まで列ができていた。私は傘を差しながら、列がゆっくりと進んでいくのを待っていた。
会場であるチャペルは、正面のステンドグラスとパイプオルガンが印象的な空間だった。私はクリスチャンじゃないし、教会に行ったこともなかったので、チャペルは非常に新鮮に感じられた。何となく、「神聖な場所」という感じがして、背筋が伸びる。
私の隣の席に座っていたのは、同じような顔に、同じ金色の髪の毛を巻いた双子と思しき女の子たちだった。入学式の後、親と合流した時に、彼女たちが母親と思われる女性と3人で一緒にいたから、恐らく双子で間違いないだろう。
「ああ、双子で同じ大学の同じ学部学科に入学したんだな」「私にも双子のきょうだいがいたら、こんなに不安にならなかったかな」と思いながら、彼女たちの様子を観察する。同時に、「2人で来ているのなら、隣の私が話しかけられる心配はなさそうだ」と思って一安心する。入学式で隣の席になった子に、一般的にどういう態度を取るのがスタンダードなのかはわからなかったけれど、「話しかけられるかもしれない」と身構えていた。話しかけてもらったところで、私はきっと緊張から、上手く返すことができない。そこまでわかっていた。
入学式は、正直退屈だった。学長のお話を聞き、他のお偉いさんのお話を聞き、ちっとも理解できない讃美歌を聞き、更には在学生からの歓迎の言葉、保護者の会からの教育の理解と協力の依頼が続く。
長い長い式典が終わり、また長い長い列に並んで記念写真を撮る。そうしてやっと出られた外は、もう雨が上がっていた。それでも4月の曇り空は、私たちの入学を歓迎してくれているようには見えない。
明日から始まる新生活を想って、ため息が出た。これから続く4年間が、果てしないもののように思えてくる。
私の大学生生活は、そんな一日から始まった。