
数日間のオリエンテーションが終わると、「新入生Welcome day」という日が設定されていた。学籍番号順に割り当てられた教室表を両手に、まるで初めてのおつかいのような不安を抱えて、何とか指定された教室までたどり着いた。
教員も交えたアイスブレイク、上級生によるキャンパスツアー、相談コーナー。私は知り合った数人ととりあえずインスタを交換し、途中の駅まで一緒に帰った。
場面緘黙症やうつ病を抱えていることが悟られないように、必死で笑顔を作り、会話を続けた。溶け込めているように見せることに、全神経を使っていた。
F大学には、友達はおろか、知り合いすら一人もいなかった。そこで生まれ変わろうと密かに決意していたのだ。病気を隠して何とか普通の人のふりをすれば、「普通」になれるような気がしていた。
でも、無理をしてできた友達に対して抱いたのは、安心ではなく不安だった。彼女たちと一緒にいたところで、「疲れた」とも「休みたい」とも言えない。高校の時に出逢った友達とは、まるで違っていた。
あれから、授業が同じになっても、廊下やお手洗いで会っても、会釈することもない仲だった。必死で取り繕ってできた友達はいないも同然。必然的に、一人きりの大学生活がスタートした。
私を歓迎してくれる場所は、どこにもなかった。