
前期のラストスパートは、もう生きた心地がしていなかった。
自分の力で登校できる元気もなく、父に車で送迎してもらうことが多くなっていた。
月曜日。中国語のテストを受けた。再履修というペナルティーに怯え、働かない頭に無理やり詰め込んだ知識は、ほとんど役に立たなかった。解答用紙には未完成の文章が並び、テスト後の見直しで一人静かに絶望していた。4月から頑張ってきたことが、すべて水の泡になった気分だった。これは、再履修確定だ。その場でそう確信できるほど、模範解答に全く見覚えがなかった。
徐々に体調が悪くなっていく。頭が重くて机に沈んでいく私の元に、声が降って来た。
「月島さん」
先生が中国語で私の名前を呼ぶ。もしかして、私の異変に気付いてくださったのだろうかと顔を上げた。
「問3の回答を、書いてもらえますか?」
「……あ、はい」
期待外れの言葉に、何とか正気を保って頷く。ここがH学園だったら。あの先生が菊池先生だったら、私の限界に気付いてくださったはずなのに、とどうしようもないことを思った。
月曜日は、泣きながら家に帰った。高校生の時から勉強は得意で、それなりにプライドがあったのだ。それが、うつ病になり、すべて崩れた。何も覚えられない。何も考えられない。私の中は、空っぽだ。そして何より、前期の数か月間、毎週重い体を引きずって登校した日々が、色褪せて萎んでいった。
火曜日は、韓国語のテストだった。
韓国語は高校生の頃から、ほとんど独学で学んできた。言葉に逃げ込むようにして覚えてきた言語だ。問題用紙をめくるたび、見覚えのある文法や単語が並び、張り詰めていた肩の力が、少しだけ抜けていくのを感じた。
これは、きっと大丈夫。
解答用紙を見つめながら、久しぶりに胸の奥で小さな安心が灯った。
それでも、体は正直だった。
水曜日、木曜日は起き上がることができず、ベッドの中で時間だけが過ぎていった。前期が終わるという実感はなく、ただ、もう動けないという事実だけがそこにあった。窓の外の明るさが変わっていくのを、ぼんやりと眺めていた。
そして最終日。
金曜日の授業にテストはなく、課題も既に提出してあった。教室に座っているだけで精一杯で、内容はほとんど頭に入らなかった。それでも、時計の針が進むのを、ただ待った。
2限の終了を知らせるチャイムが響き渡った瞬間、無意識に口から息が漏れた。
――ああ。
肩に乗っていた何かが、音もなく落ちた気がした。
達成感なんてものは、なかった。
嬉しいとも、頑張ったとも思えなかった。ただ、終わった。それだけだった。それでも確かに、前期は私の手を離れていった。
ようやく、前期が終了した。