
「元気そうだね」
うつ病に苦しみ、それでも人並みに普通の顔をしなきゃいけないと気を張っていた時、そう言われたことがある。
グサッと、刃物が胸に刺さったような衝撃を覚えた。
私は曖昧に笑うことしかできなかった。
でも、心の中は酷いショックを受けていた。
確かに、元気そうな演技はしていた。でもそれは、相手に気を遣わせないためだ。朝、調子が悪い中這うようにして部屋に行き、必死にメイクをした数時間前の自分を思い出す。
「元気そうだね」
それが相手にとって、全く悪意のない言葉であることはわかっていた。
でも私は、「めっちゃ顔色悪いね」と言われる方が、何倍も嬉しかった。……言われたことないけれど。
それを相手にやんわりと伝えると、「仮に元気なさそうでも、『元気なさそうですね』とは言えないよ」と言われた。なるほど、「元気そうだね」は、「こんにちは」と同類の挨拶的なものなのかもしれない。
それでもやっぱり、「元気そうだね」と言われると、傷付く。それは病と闘った時間や労力を、なかったものにされる気がするからだ。大丈夫なんかじゃない。元気なんかじゃない。メイクまでして、必死に身なりを整えて外出している私がそんなことを言うのは矛盾しているようにも感じられるかもしれないが、平気そうに笑う私の裏に潜む苦労を、少しだけ想像してもらいたかった。