
物心ついた時から、私は6人家族だった。
きょうだい喧嘩や嫉妬は成長と共に減ってきたけれど、未だ解決しない問題に、毎朝の洗面台戦争がある。
その戦争の始まりは、早朝だ。
今のところ、一番手は私。最近は休みの日でも早朝覚醒してしまうので、誰も起きて来る前に急いで洗顔を済ませる。
時間に急かされた不機嫌な妹と弟が起きた瞬間、その戦争は始まる。
洗顔。歯磨き。ドライヤーにヘアアイロン。
各々、日常を始める準備をするために、奪い合うように洗面台を使うきょうだい。朝なので、基本的にみんな不機嫌で、「まだ使い終わらないの?」「待ってるんだけど?」という無言の圧が背後からかかる。
洗面台前に何人もが並んで歯磨きをする時もあるし、洗顔が終わって後ろを振り返ると、ライブ前のお手洗いように列ができていることもある。
ただ鏡を見たいだけなのに、身長180センチの兄や弟が歯磨きをしていると、いくら背伸びをしても自分が映らない。そんな時に限って、彼らは私をからかうように、体を大きく揺らして鏡を占領するものだから、私はため息を吐いてその場から離れる。
それぞれ自分のペースで家を出る支度をするけれど、洗面台だけは自分のペースでは使えない。それが大家族の弊害だ。
社会人の父と兄。大学生の私。高校生の妹と弟。
その全員の朝の支度時間が被ってしまった時、洗面台戦争はより複雑化する。
メイクやヘアセットには抜かりなく時間をかける妹の蘭は、いわば我が家の洗面台の最高権力者だ。急いでいる朝の彼女を怒らせると色々面倒なので、私たちきょうだいは静かに気を遣っている。でもそんな中、父が起きてきて構わず頭を洗ったりするものだから、蘭の機嫌はますます悪くなる。
我が家の洗面台は、毎日そうやって相当な過重労働に耐えている。
2時間ほどの激しい戦争を終えて、それぞれ学校や職場に向かう。もう十何年も当たり前に起こっていることなので、それに対して憂鬱などは感じないけれど、外に出て一日を始めようとする時、我らは既に、戦争を終えた後なのだ。
いつか、こんな日々が懐かしくなる日が来るのだろうか。