
高校2年生の終わりから、高校入学以降初めて体育に参加しては、授業後に保健室に運ばれることが続いた。
みんなの前で動くことに対して、それほどの恐怖を感じていることに、そうなって初めて気が付いた。
走れるような気さえしたのに、いざ動いてみると脚が震えて、上手く歩くこともできない。
感覚に、体が追い付かなかった。今まで生きてきた中で、初めて経験することだった。
トイレの中にこもって、過呼吸に耐えていた。酸欠で、手足がビリビリ痺れる。意識すら遠くなっていく。1時間以上動けなかった。誰かに助けを求めたかったけれど、トイレから出ることが怖くて、一人で苦しむことを選択してしまった。だって、もし誰かに声をかけられても、何て答えればいい?ただでさえ話すことが苦手なのに、パニック状態でまともな会話ができるとは思えない。これは、「私以外の誰かのため」なのだと思い込んで、トイレから動かなかった。
そうやって、隠れてパニックをやり過ごすことも増えていた。本当は助けて欲しかったのにそうしなかったのは、単純に、私に勇気がなかったからだ。今ここで倒れたら、心配かけてしまう。迷惑かけてしまう。引かれるんじゃないか。そんな思いがずっとあって、助けを求められなかった。
お手洗いの、壁を見つめながら考える。
体育、やりたいのに。やりたいのに、やりたいのに、やりたいのに!
悔しさで、涙が滲んでくる。
動きたいのなら、どうして動けないのかわからなかった。私の意思とは、無関係にそうなってしまう。わかっていたことだったけれど、ここまで心と体が別々のところに行きたがるとは思っていなかった。
もういいよ。私は、100パーセントこの病気なんていらないと思っているのに。
意思と現状が反対方向に歩いて行く。だからこそ自分のことが、全然信用できなかった。